試される大地、ときどき彩の国

ツイッターのプロフ欄の補足、ときどき日記

さよならの向う側

最終回からかなり日が経ったけどネタバレを気にする繊細さは持ち合わせにございません。最近ガチ忙しかった。

 

それはもうボロ泣きしました。特に第2話が話の途中からボロッボロに泣いて、しかも涙を拭く手間を惜しんでそのままの状態で顔面汚さフルスロットルで見てた。

全四話オムニバスドラマとして各話の質の高さはもちろんなんだけど、このドラマがなお良かったのはその各話のバランスだったと思う。

死後『さよならの向う側』で目覚める主人公たち、彼らは24時間以内なら現世で会いたい人に会うことができるがそれはその死を知らない人間に限られるという設定。普通近しい人間にはその死がすぐ知らされてしまうため本当に会いたい人間はその会える範囲外になってしまう。しかし第一話、第二話では『幼すぎて死を理解していない』として息子と『認知症で死を理解していない』として父親とそれぞれ会うことができた。

これで大方の視聴者が『こういう展開なのね』と理解したところで第三話。ところがこの話の主人公はその裏技にあっさり気づき、まったく別の人間として最も会いたい人間に会いに行く。

ストーリーには感動しつつ謎の肩透かしを食らった最終話。前半部の主人公と話す『さよならの向う側』の案内人の体勢と目線がなんかおかしい。そしてふらっと出ていったまま死んだ主人公の死を同居人の彼女は知らず、何故か川辺を捜している。それもそのはず主人公は猫だったのです。まさかそんな隠し玉があったとは。

猫は人より素直なのか彼(オスだった)はすぐに会いたい人に会うことができ、視聴者は人外の来客という驚きもそのままに後半は案内人のエピソードを見ることになる。

実は案内人は死後『さよならの向う側』に来た人間であり、前任者から引き継いで案内人をしている。それは本当に会いたい妻は制約上どうしたって会うことができず、他の会いたい人間を選べないままその空間に残っていたとのこと。

そう。ここまでみんななんだかんだで一番会いたかった人に会えていたのに全話通じて出ていた案内人自身は会えていない。会えていた法則が最後の最後に崩され、最後の最後に案内人の時間と視聴者の時間は連動し、ちょうどそのとき妻が『さよならの向う側』へとやってきて二人は再会する。

おめでとう!二人そろって転生だね!と胸をなでおろしたのもつかの間、案内人は転生への扉をくぐらない。生まれ変わってまた会おうと別れてしまう。私たちの気持ちの持っていき場isどこ?

という穏やかなテンポと演出と見せかけてかなりの見終わった後独特の余韻の残るドラマでした。

そして作品としての全話構成も見事ながら、これは企画力も見事だったと思います。放送時期は番組改編期の隙間を突いていて、この時期どうしても特番などになりがちなところ常に連続ドラマを見たい人間の欲求を満たし、これ自体は30分程度で終わるので忙しい時期にもぴったり。

私は上川達也さん目当てに見始めましたが、役者さん目当て以外にもちょうどいい時期、時間、などのお手頃っぽく見てみた人も多かったのではないかと思います。日本のドラマ界にもこういう仕掛け人がまだまだいるんだなとうれしくなりました。

 

余談ですが、このドラマの後に『5分後に意外な結末』というこちらもオムニバスなドラマをセット抱き合わせ的にやっていたのですが、こちらも企画と各話の構成、あと世にも奇妙な物語タモリさんにあたる先生と生徒が出てきてそのやり取りも面白かったのですが、最後の4話で守りに入ってしまったというか小ぶりな展開になってしまったのが惜しかったかも。最後こそ思いっきり振り切ってほしかった。

個人的なおおすすめは『死神』。後味の悪さが秀逸。